2013年7月6日土曜日

死傷率

 朝鮮戦争について書かれたD・ハルバースタムの『ザ・コールデスト・ウインター』を読み進めていく中で「死傷率」という単語が出てきた。災害時など、亡くなった人の数と怪我した人の数を合わせて「死傷者」と呼ぶのがずっと謎だった。しかし、戦場においてこの言葉の意味するところは明瞭で、つまり兵士として有用な者はあとどれだけ残っているかということだ。「死傷率」はもともと軍事用語なのかもしれない。

 この『ザ・コールデスト・ウインター』は、上下二巻1200頁に及ぶ大作で、ようやく上巻の後半にさしかかったところ。主役はマッカーサー。占領下の日本で皇帝のように振るまったマッカーサーの来歴を父の代にまで遡り、その偏執狂的な性格を解き明かしていく。

 大義のない戦争を戦う兵士は悲惨だ。ベトナム戦争の雛型はすでにここにある。金日成、李承晩、そして蒋介石の食わせものぶりもあまねく描かれる。両軍の間で右往左往しなくてはならない一般庶民は更に悲惨だ。僕がソウルに頻繁に出没していた80年代前半、625-ユギオはまだ生々しく語られていた。

 それにしても、朝鮮戦争のことを僕らはあまりにも知らなさすぎる。BSで放送されたという『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』も併せて観ると(なぜかネットでも観られる)よいだろう。