2016年5月28日土曜日

技なし

いっとき「研究員」という肩書きで仕事してた時期がある
事務屋をしながら稽古も担当するという二足の草鞋を履いていた頃のことである
身体教育研究所の職員には「技術研究員」という名称が与えられている
つまり、「研究員」とは、技のない「技術研究員」ということだ

技術研究員になったのは、二足のわらじを辞めたときで、
ただ、そのときに、ちゃんと実技試験を受けたという記憶がない
もし、資格認定の査察が入ったら、
記録不備あるいは情実認定で資格を剥奪されてしまうのではなかろうか
いまでも、ビクビクしながら仕事をしている

一度、ダン先生に「試験受けさせてください」とお願いしたら
「おまえ落ちるから受けなくていい」というひどい答えが返ってきた
試験代わり、という意味だったと固く信じているのだが、ダン先生が刺客を送ってきたことがある
M画伯である
大井町稽古場で仕事を始めて間がない頃で、
操法受けさせてくださいと言ってきたときには、正直ビビった
これが試験でなくて何であろうか
操法中にあんなに汗をかいたことはない
冷汗三斗*という言葉があるが、まさに冷汗だった

それから随分時間が経ってしまった
その後、技が身についたのか?と問われると、
悲しいかな、そのような実感を持てぬまま現在に至っている
中身は「技のない」研究員のままである

*冷汗三斗(れいかんさんと)
 この文章を書くまで冷汗三升(ひやあせさんじょう)だと固く信じていた
 まさに、冷や汗もの
 こういう記憶まつがいというのが結構多い
 「唐突」を「からとつ」と読んだり...