2023年7月21日金曜日

地底旅行

  生涯読んだ本の中で10冊を挙げろと言われたら、まず最初にジュールベルヌの地底旅行を挙げるだろう。小学生の頃読んだ本だが、ここから、僕の冒険心に火がつき、「コンチキ号漂流記」へと雪崩れ込んでいく。小学生になった孫にも読ませてみようと、どんな版があるのか図書館の児童書の棚を物色してみた。岩波少年文庫に収められているのだが、どうみても小学校高学年向け。僕自身が小学生の時の読んだのは、子供向けに編集された図絵満載のもので、ちゃんと原作を読んだわけではない。

 この岩波少年文庫版の地底旅行、夏の課題図書として読んでみることにした。まず、その分量に驚いた。400頁を超えている。探検をはじめるまでの話の部分がなかなか長く、ようやく160頁に辿り着いたところで地底に入っていくのだ。アイスランドの火山口から地底に入り、イタリアの火山口から地上に戻ってくるというストーリーは記憶している。僕が幼少期に読んだものも、基本的なところは、ちゃんと押さえたものであったらしい。ただ、イタリアの火山の名前をエトナ山と記憶していたのだが、原作によるとストロンボリであった。

 この原作が書かれたのが1863年。日本でいえば江戸末期、明治維新以前のことなのだが、ヨーロッパでいえば、産業革命を経た、まさに科学技術勃興期の勢いの中で書かれた小説なのだ。僕がこの本を読んだのは、1960年前後ではなかったか。科学技術立国が謳われた時代でもあった。



2023年7月14日金曜日

古道具

 人の書庫の整理を頼まれてやっていると、思わぬ骨董品に出会うことがある。
先月の掘り出し物はスライドプロジェクタ。こういうジャンクを目にすると、つい捨てられるのは可哀想と貰ってきてしまうのが、元ラジオ少年の悲しいさが。60年代?のスライドプロジェクター。Birdie Fujiとある。

 かつてポジフィルムで写真を撮っていた時期がある。押入れの奥から、まだデジタル化できてないスライドを引っ張り出してきてプロジェクターに装填してみる。ランプはちゃんと点く。1980年代の画像がスクリーン上に映し出された。それにしても発熱がすごい。

























 そして、手廻しレコードプレーヤー。小さな紙の箱から出てきたのは、プラスチック製のちゃちいプレイヤー。GDM(Graded Direct Method)の教材レコード2枚も同梱されている。鉄の針をレコード盤の上にに落とし、黄色のツマミを回してみると、針と直結された振動板から、かろうじて聴き取れるくらいの音量でEnglish through Picturesのテキストの音声が聞こえてくる。

 はて、どうしたものか。だんだん、わが家が古道具屋みたいになってきた。


2023年7月2日日曜日

糀ブーム

 4月にやった石川合同稽古会のオプショナルツアーで鶴来に行った連れ合いが、鶴来の糀屋さんで糀を手に入れたところから、わが家の糀ブームがはじまった。正確にいうと、3月に人生初の味噌作りをやったから、すでに糀ブームは始まっていたのかもしれない。甘酒にはじまり、塩糀、醤油糀、玉ねぎ糀といった調味料づくりが続き、今は応用編の水切り豆腐の塩麹漬け、甘酒漬けに移行してきた。料理全般なんにでも自家製糀調味料を使っている。目に見えるかたちで醤油瓶の醤油が減ってきて、美味しいのはよいが、これは塩分の過剰摂取になっているのではと心配になるほどである。鶴来からやってきた糀はあっという間に底を尽き、京都の糀屋さん、松任の糀屋さん、スーパーの棚で見つけたみやここうじと、あれこれ試し、また最初の鶴来の糀屋さんに舞い戻ってきた。わが家の糀ブームは一過性のものでなく、一気に定着してしまいそうである。



2023年6月27日火曜日

6月の読書

オーラル派 秋山基夫 私家版 2023

歴史の屑拾い 藤原辰史 講談社 2022

原発とジャングル 渡辺京二 晶文社 2018

 去年亡くなられた渡辺京二 さんの原発とジャングル 。これに収められている「原初的正義と国家」に深く同意。と、これだけでは何のことかわからないので、少しだけ引用。「従って私が心がけたいことは、国民国家に拘束されぬ、そして依存しない個人であろうとする心構えを常に保ち続けることである。そして自分の個としての生を、自分が属するとされる国家の興亡や利害と全く関係のない、自分の責任でしか築けないともに生きる仲間"との関係に求めたい。」(p.61)

嫌われた監督 鈴木忠平 文藝春秋 2021
100年前の世界一周 ワルデマール・アベグ ボリス・マルタン 日経ナショナルジオグラフィック社 2009
AI監獄ウイグル ジェフリー・ケイン 新潮社 2022

2023年6月23日金曜日

稽古着生活

 夏になると稽古着生活を断念する、というのが、これまでの通例だったのだけれど、今年は継続中。薄い生地で稽古着、稽古袴、そして襦袢をつくってもらったことが大きい。これまでは、稽古用と普段用の二種類くらいしかなく、その落差がけっこう大きかった。今年は、これに外着用の稽古着が加わり、あれこれコーディネートが可能になった。稽古着でおしゃれなんて、これまで考えたこともなかったのだけれど、気分に応じて稽古着を変えてみるということが可能なのですね。浴衣から稽古着に着替える中間段階でTシャツに袖を通すことはあるけども、ほぼ24時間、和服で過ごすようになった。もっとも、稽古着生活=和服生活ではなさそうだ。着流しスタイルはどうも性に合わないというか落ち着かない。つまり、袴は常に穿いている。この袴というのが結構謎です。レトロモダンと言えなくもないけれど、その実、もっと先を行っている気がしてならない。暑さはここからが本番。さて、稽古着で猛暑を乗り越えられるのだろうか。

2023年5月24日水曜日

5月の読書

5月は読書月間になってしまった。
5日間くらいお遍路に出かけるつもりにしていたのだが、体の方がウンと言わない。草臥れて行きたくないのではなく、もっと長い距離を歩きたいという。困った。先月、高知市内にある33番札所雪蹊寺を打ち、ここから足摺岬を目指すことになるのだが、一息で足摺岬まで歩き、さらに愛媛側にたどり着くには相当の日数が要る。区切りうち遍路にとって、どこで区切るかはなかなか難しい。中途半端なところで区切ると、往復だけに時間を取られ、先に進めない。今月は、雪蹊寺から37番札所岩本寺までの80キロを歩く計画を立てていた。であるのに、体の方は嫌だという。仕方なく計画は先送り。ぽこんと一週間の空きが生まれてしまった。稽古を入れたとしても、急に人がやってくるはずもなく、暇である。
で、今月は読書月間となった。

劇場アニメーション「犬王」誕生の巻* 松本大洋・湯浅政明 河出書房新社 2022
平家物語 犬王の巻* 古川日出男 河出書房新社 2017
 映画犬王 の影響なのか、単に京都を訪れる観光客が増えている余波なのか、等持院 界隈が以前より賑わっている気がする。映画犬王 が興味深かったので、アニメの原作となった平家物語犬王の巻 を読むことにした。初めての古川日出男 。琵琶法師は滅びた平家の物語を奏で、小説家は歴史の闇に消えた犬王を甦らせる。

あなたのルーツを教えて下さい* 安田菜津紀 左右社 2022
フェンスとバリケード* 三浦英之・阿部岳 朝日新聞出版 2022
太陽の子* 三浦英之 集英社 2022

老いと踊り* 中島那奈子・外山紀久子編著 勁草書房 2019
 なぜ、僕らを発見するのは「踊り」の人たちなのだろう?という問いはずっとある。踊る人たちは、文化の違いも国境も越えて、すっとここにたどり着く。もちろん、室野井洋子、 田中敏行という仲間がいたからでもある。この本は2014年に開催されたシンポジウム「老いと踊り」をベースに、その後の論考を加えた構成になっている。大野一雄の73歳デビューが与えた衝撃の大きさから、この本が始まっているといってよい。こういう立体的な言語空間の存在は貴重。と同時に論考の緻密さを求めるがあまり、身体から離れていくという矛盾とどう向き合うかが問われることになる。

記憶のつくり方* 長田弘 晶文社 1998
深呼吸の必要* 長田弘 晶文社 1984

直立二足歩行の人類史 ジェレミー・デシルヴァ 文藝春秋 2022
 キューブリックの映画2001年宇宙の旅の冒頭シーンの映像は強烈だった。二本足で立つことで道具を使うことを覚え、獲物を捕らえられるようになった人類は生活圏を広げていった。そんなストーリーを刷り込まれてきた。ところが実際は、むしろ「狩られる」存在であったようで、樹上の安全地帯を生活圏とし、猛獣が昼寝する時間に樹上から降りて食料を探していたらしい。#直立二足歩行の人類史 の最初の章は、二足歩行にまつわる諸学説〜水生類人猿之説とか〜に充てられていて、それぞれ興味深い。
人類の祖先は、樹上ですでに二足歩行しており、その歩行によって平地を移動しはじめたのではないかというのが、この本で示される新視点。ゴリラやチンパンジーは人類と共通の祖先を持つが、枝分かれする前の段階ですでに二足歩行しており、ゴリラ、チンパンジーのナックルウォークは枝分かれした後で獲得されたものではないかというもの。人類の二足歩行の特徴を「膝の裏を伸ばし、腰を直立させて」と記述されると、?っと思い、それって既に西洋中心主義が混じってないか?と突っ込みたくはなる。古人類学者って世界に何人くらいいるんだろう。

歩く江戸の旅人たち2*  谷釜尋徳 晃洋書房 2023
辺境メシ*  高野秀行 文藝春秋 2018
異性装 中根千絵他 集英社インターナショナル 2023
嘘と正典* 小川哲 早川書房 2019
急に具合が悪くなる* 宮野真生子・磯野真穂 晶文社 2019
他者と生きる* 磯野真穂 集英社新書 2022