ただ、この杖の存在をぽっかり忘れることがある。頻繁にある。
一週間の時間が生まれたので遍路に出た。立冬を過ぎているから冬遍路である。
まずは宇和島に向かう。
いっと最初から忘れた。思いのほか早起きしたので、準備万端整えて、予定より早く家を出発して、最寄りのバス停に向かう。数百メートル歩いたところで、杖を忘れていることに気づく。慌てて家人に電話。途中で杖を受け取り、今度は違うバス停に向かって歩きはじめる。
無事宇和島駅に到着。改札を出て駅構内の端っこの喫煙所に向かう。一服して、その日の宿のある方向に歩き始める。数十メートル歩いたところで、杖がないことに気づく。慌てて戻る。遍路初日で二度も杖を忘れるという失態。前途多難だ。
遍路4日目。大洲から内子を通り抜けて大福という旅館を目指す。車道をひたすら歩く一日。内子に入る。内子に来るのは二度目、八年ぶり。前回は夏の人形浄瑠璃公演を観にきた。土地勘があるつもりで町に入ったが、どうも怪しい。ビジターセンター近くの公園のベンチで地図を広げ、前回泊まった宿の場所を確認し行ってみることにする。宿は閉まっていて、その前のベンチに座り、その先を考えていたのだが、杖が手元にないことに気づく。どうやら、さっきの公園に起き忘れたらしい。ちゃんと、そこに戻れるかどうか。
遍路最終日。古岩屋から久万経由で松山市に入る。大街道という市の中心らしいとこでバスを降り、商店街のアーケードを抜け、街の概要を把握しながら、ずんずんとJR松山駅を目指す。あとはみどりの窓口で京都までの切符を買うのみ。連休がはじまるからなのか、行列ができている。その行列に並んでいるうちに杖がないことに気づく。置き忘れたとすれば、駅前でリュックを下ろしたところか。いや、駅前の横断歩道を渡る前にも一度、荷物を下ろしている。行列から抜けるわけにもいかず、やや悶々としながら順番を待っていた。
無事、杖と一緒に帰ってきたものの、今回、杖を忘れる回数が多過ぎた。
先を急ぐと、杖を忘れる。
今回の遍路は宇和島から岩屋寺へ、海から山への百キロの行程。岩屋寺は45番札所。とうとう八十八ケ所の半分を越えたことになる。GoogleMapには極力頼らず、紙の地図を参考にしながら歩くようにした。この方が断然、風景に目がいく。手持ちのスマホのカメラはしょぼ過ぎるので写真も撮らない。かといって、写真なしのブログも寂しいので、宇和島の鯛めし屋でもらった【鯛めしの食べ方】を載せておくことにする。あれはちょっとクセになる味だった。










