大阪から先に行けない
そこから先に行こうとすると、必ず邪魔が入る
岡山の実家を処分したのが四年前
以来、岡山の土も踏めていない
四国遍路も頓挫したままだ
コンパスは北を指している
昨年末の義姉急逝以来、秋田に通うこと六度
妻娘は秋田で越冬することになり、
私はひとり横浜暮らし
この逆単身赴任状態も三ヶ月目に入る
冬の秋田は初めてではないが、
暮らしたことはない
早起きして雪掻きして、
一日に何度もお茶を飲んで、
早々と布団に入る
横浜と秋田の時差は三時間
秋田の家の玄関を開け、
「ただいま」と声をかけて中に入る
というのも、そう奇異ではなくなってきた
雪掻き大変だな〜、という挨拶ほどには、ジモティたちは大変に思ってない
らしいこともわかってきた
実際、早朝の雪掻きは気持ち良い
ダンプと呼ばれている大きなスコップで雪を掻いては側溝に流していく
この冬降った東京の雪とちがい、秋田の雪はサラサラしていて軽い
30分も雪掻きすれば、玄関周り、前の道の雪はなくなり、
おお、一仕事したぞという気分になれる
時折、群れをなして旋回する白鳥の鳴き声に手を休め空を仰ぎみる
結構、贅沢な暮らしなのだ