2020年1月22日水曜日

近代日本の民間精神療法

できるだけ本は図書館で借りて済ますようにしているのだけれど、昨年あたりから、リファレンスの多い分厚い本に挑戦する機会が多くなってしまい、結局、蔵書を増やす結果となっている。こないだ買ってきた「日蓮主義」の本もそうだが、この本も買ってしまうことになるのだろうか。アカデミズムの中で、整体がどのように扱われているのかに興味は勿論あるのだけれど、むしろ、次のような問題意識は、僕自身のものと重なっている。さてお手並み拝見、という感じで読みはじめたところです。

日本近代の科学思想はどのように形成されたのか。歴史的にみるならば、英·米·独·仏·蘭など西欧各国に由来するさまざまな科学思想が、制度化された概念装置がない段階の知的世界へと無秩序な奔流のように流れ込んだことによって形成されたのが、日本近代の科学思想の原型であった。欧米由来のさまざまな科学思想は、翻訳され、紹介され、断片化された形で近代日本の知的世界に移動され、その世界のなかで、欧米においては存在しなかった関係性が作られ、新たな意味が形成された。そこに起きたのは、個々の思想の移植ではなく、個々の思想が互いに関係をもつための新たな言説空間が日本語で形成されたという出来事である。そして、その言説空間では古来の思想と西欧科学思想が混交体を生じ、合理性と神秘性、普遍性と特殊性、近代と前近代、科学と科学外、西欧と日本との往還といった現象がしばしば起こっている。(p.52)