2023年8月3日木曜日

半世紀 7 何でも見てやろう

小田実 の「何でも見てやろう」 は、生まれてはじめて自分のお小遣いで買ったという意味で思い出ぶかい一冊だ。同級生の家族が営む、町で唯一の本屋、石黒書店に、この本を取り寄せてもらうよう、勇気を振り絞って一人で出かけて行ったのだった。

出版社は河出書房新社。ビニールのカバーがかけられた一冊だった。初版が1961年とあるが、いくら読書少年だったとはいえ、小学生のぼくが読んだとは思えず、おそらく、実際に手にしたのは中学生になってからのことだろう。それでも、ずいぶん背伸びした中学生だった。

五木寛之 の「青年は荒野をめざす 」が刊行されたのが1967年。ここくらいからは、ほぼリアルタイムで読んでいるはず。僕よりふた回り若いバックパッカーには、沢木耕太郎 の「深夜特急 」あたりがバイブルになるかもしれないが、これが出たのは1986年。

僕にとってのバイブルは、やはり小田実の「何でも見てやろう」ということになる。たどったルートも、結果としてだが、小田に倣うことになった。

【追記】1967年に本書のカラー版というのが出版されている。僕が実際に手にしたのは、このカラー版の方であった可能性が高い。1967年であれば、中3の時ということになる。改めて読み直してみると、これは傑作です。