2012年5月12日土曜日

引き受ける

やっぱりボクはお遍路しているのかもしれない
妻の入院に付き添って一月半、そんな風に思う

付き添うといっても、なにかをやってるわけではない
家事をして、洗濯物を届けに病院に行く
そして2時間か3時間一緒に過ごす
だらだらと話し、場合によっては、傍らで持ち込んだ本を読んでいる
これまで関わることのなかった病院という空間に身を置き、
そこで展開される人間模様の可笑しさ、哀しさをみているだけである

妻は入院以来、点滴だけで生きのびた
どんどんアクが抜けていき、少女のようになっていった
ひょっとして、こいつ本当にいい人だったの?と思えるほどに

手術前には輸血され
それでも気丈に振るまっている妻をみて
ぼくはプライドを捨てることにした
つまらないプライドだけど...
点滴しようが手術しようが、生きてくれさえすればいい
そんな風に思うようになった
術後は大変だろう
その大変さもまとめて引き受けることにした

そう、「引き受ける」ってことを、ぼくはこれまでしてこなかった

入院して45日目の午後、妻を手術室に見送った
小学校の修学旅行のように、ひとつひとつ名前を書き込んだ荷物と一緒に
娘と二人、殺風景な病院のロビーで待った

6時間半後、ようやく呼ばれICUに通された
ここは宇宙基地か?
SFじみた空間がそこにあった
隊員に導かれるまま、妻の横たわるベッドに行った


ぼくはもう土佐の国を抜け、伊予の国を歩いている頃だろうか