今期の稽古しずかにはじまる
「和紙歩き」ってやったことある?
と若者に訊いてみたら、「鷲歩き」ですか?
と返ってきたので、今期の稽古は和紙歩きからはじめることにする
すり足の稽古を畳の上でなく、お習字の和紙の上で行う
書道を真面目にやっている人たちには叱られてしまいそうだ
下手に足を動かすと、たちまち紙は破けてしまう
一枚数十円の和紙をベリベリと破られてしまっては、こちらとしてもたまらない
足の裏でアイロンをかけるように動かしていくのだ
土踏まずを押し潰すように足裏を伸ばすのだ
足指の腹も伸ばすのだ
手と同様、足も「つかむ」ことばかりやってきているから、
この引き伸ばす感じがなかなかつかめない
踵を浮かせないように足裏を引こうとしたら、
足の後退とともに、足首の曲がりが深くならないと、足裏の一定は保てない
靴の生活があたりまえの現代日本人の足首感覚は絶望的に退化している
下駄でも履いてみれば、すぐ分かることなのだが...
足首が締まる感じがわからない人に、「あんたは締りがない」と言っても通じない
このたった一つの感覚を掴んでいるか否か
それが所作の美しさとだらしなさを分けることになる
なんとか坐法にたどり着く
もちろん和紙の上でやる
正座にたどり着いたら、正座のまま手を和紙の上に置き、後退りする
つまり、紙の上をスネが滑っていく
この滑りを実現するのが、実は引き締まりの感覚なのである
最初の稽古って、いわば囲碁の初手のようなもので、
その後の稽古の流れを決めてしまうことがある
ちょっとばかり怠けていた動法の稽古を今期はやることにする