2014年4月5日土曜日

『献花』

 とりふね舞踏舎の、三上賀代還暦記念公演『献花』(4月2日 KAAT神奈川芸術劇場)を観に行ってきた。60歳になった三上賀代が踊る姿をみて、「三上賀代、いい歳の取り方をしているな〜」と思った。勇気をもらったと言ってもよい。チャラチャラした60代が街をぞろ歩いているアンチエージングの時代を突き抜けた女が一人立っていた。

 この『献花』という作品、1992年初演とあるから、20年間、折々に踊られ続けていることになる。そもそも、私が三上賀代の舞踏を観たのは、ほんの数回に過ぎず、『献花』を観るのは勿論はじめてのことである。にもかかわらず、きっとこれまでで一番体が使えているに相違ないと断言できるし、また今度の公演によって『献花』は「老境」が表現される作品に転化した、とこれまた断言してしまう。80になっても三上賀代は踊っているだろう。

 湘南舞踏派の公演を今回見られないのはまことに残念。三上賀代とその夫君である三上宥起夫が立ち上げた湘南舞踏派という素人集団の公演を何度か観て、「花嫁修業に舞踏を学ぶ」というコピーを作ったことがある。私にとっての三上賀代は、この湘南舞踏派を育てた教育者であった。しかし、今回の公演を観て、舞踏家三上賀代を再認識することになった。

 Twitterで最近フォローしはじめた「白川静bot」というのが、なかなかよい。三時間に一度、白川静の文章を開示してくれる。そのなかに、【老】というのがあった。"【老】こそ東洋における永遠の美である。ときにはその老境を強調するために、羅漢図などのように醜・怪に至ることも避けることがない。醜怪のうちに完全をみようとする思考は、すでに[荘子]のうちにもあった。そしてその終極は無に帰し、寂莫に帰する。" 

http://www.kaat.jp/d/torifune#.U0AFLl40iu4