想い出だけで生きていくなんて
できるはずがないと思っていたが
案外、そういう人生も可能なのかもしれない
妻が逝き、
あんまり 淋しいのに
夢の中にさえ出てこないので、
「おい、婚活しちゃうぞ」と写真に話しかけていた
遺品を片付けていたら、
小中高あたりの集合写真が束になって入っている箱が出てきた
一人一人の顔は随分小さくしか写ってないのに
ルーペで拡大してみると、けっこうちゃんと撮れている
大型カメラ侮りがたし
へぇーっと思って、妻の顔を探していくと、
美少女に写っているではないか
カメラをスクっと見据えて
絶対笑わないぞと意志しているかのようで
実に凛とした姿なのだ
僕に見せたことのない写真に
僕の会ったことのない、妻の姿があった
なんとも不思議な出会い感覚
一番気に入ったのは小学校三年生のときのもの
足元が下駄なのが時代を現している
古い写真と対話していくだけで
けっこう楽しい余生を送れそうではないか
こんなんでいいのかな、オレ