片桐ユズルが発行していた「かわら版」というミニコミがある。1967年にはじまり1990年代まで続いたもので、70年代中盤からの10年間くらい僕も読者の一人だった。昨年末出版された「忘れてもいいように」は片桐ユズルの語りを元に構成されているのだけれど、「かわら版」は言ってみれば紙に保存されている記憶と呼んでいい。
そのかわら版、残されてはいるけれど、デジタル化されているわけではないから、現物を手にするしか、それに触れる機会はない。
「かわら版」デジタル化しちゃいましょうよ、と提案したのは、僕自身、段ボール三つ分くらいのノートをデジタル化したり経験があるから。ノートをバラしてスキャンする。カッターナイフと定規、それにパソコンとスキャナがあればできる。作業としてはそれほど難しいものではない。とにかく一度現物見せてとお願いしたところ、分厚いファイル3冊が届いた。
現物を見て頭をかかえた。最初期のものー発行から半世紀経っているーは予想以上に劣化が進んでいる。そもそもが藁半紙(いまの人に分かってもらえるかな〜。一番廉かった紙質のもの)に印刷されたもの。おまけに、パンチで穴を開けたものを閉じているので、端っこが欠けている部分もある。このままスキャナにかけたらバラバラになってしまいそうだ。デジカメで撮影する必要が出てくるかもしれない。パンチ穴が本文にかぶり、データとして欠落している部分もある。できればパンチ穴のない現物がほしい。これは思った以上に手間のかかる作業になりそう。一年がかりのプロジェクトになる予感。みなさんの知恵もお借りしたい。