2021年5月17日月曜日

石坂洋次郎の逆襲

石坂洋次郎の逆襲 三浦雅士 講談社 2020 ■この本は、図書館の書架に戻される前の返却本のラックで発見した。こういう出会い方も割に多い。石坂洋次郎〜青い山脈(映画であったり、その主題歌であったり)という連想ははたらくけども、よくよく考えてみると一編の小説も読んだことがない。■石坂洋次郎、母系性、折口信夫、エマニュエル・トッド、宮本常一…。話はあっちに飛び、こっちに飛びしながら進んでいくのだけれど、同郷(弘前)の作家について、地元の新聞(東奥日報)に書いていることもあるのだろうが、三浦の弾けぶり、はしゃぎぶりが伝わってきて読んでいてたのしい。■(p.170)一九四七年、朝日新聞に連載された『青い山脈』は、戦前に発表された『若い人』や『美しい暦』などの焼き直しに近いと思われるほど、石坂洋次郎の思想は戦前戦中戦後を通じて一貫している。左右両翼を痛烈に批判する姿勢は微動もしていないのだ。にもかかわらず石坂の一貫性が話題にならなかったのは、右翼と同時に左翼も批判されていたからであり、その論理の仕組みが誰にも見抜けなかったからだと思われる。石坂は天皇主義者も共産主義者も父系制の信奉者であることに変わりはないと思っていたのである。■折口信夫の民俗学、エマニュエル・トッドの家族論研究を補助線にして石坂洋次郎の作品を解析しようという試みは、補助線が濃すぎて、逆に石坂洋次郎の存在が希薄になっているような気もするが、いかんせん、僕自身、石坂洋次郎をちゃんと読んでない。まずは、文庫版の「若い人」を借り出してきた。700頁の長編。しかも、字が小さい。とても読み通せるとは思えない。ただ、たしかに、戦前に書かれていたとは思えないほどのモダンさなのだ。■結局、僕は、石坂洋次郎には向かわず、トッドの方に移行してしまった。