夫婦とは異化である
故に、軋轢葛藤は、夫婦間に於いてデフォルトである
かつ、お互い至近距離にいるため、殺傷力は強力である
その異化から始まる関係のなかで
同化を探っていくこと
これを「結婚生活」と呼び
共同作業によって、同化領域を増やしていくこと
これを「練る」という
とはいえ、
その同化のための共同作業は
年を経るにつれ減ってゆき
同化しきれなかったものが堆積沈殿してゆく
これを「諦めの境地に入る」という
ところが、その沈殿物はやがて腐敗発酵しはじめ、
長い時を経たのち、たとえば病気の形をとって発動する
しかし、これもまた、同化に向かおうとするはたらきなのだ
人間ってほんとやっかい
和解は可能か?
このまま、和解なきまま離別することになるのか
最期の一ヶ月を過ごす前まで、そんな風に半ば諦めていた
ところが
あの汗とあの熱とあの最後の大欠伸によって
僕らの間にあったわだかまりという名の沈殿物を大掃除して妻は逝ってしまった
まったく見事だよ
和解は可能だ