2023年11月28日火曜日

11月の読書

翻訳、一期一会* 鴻巣友季子 左右社 2022
江戸の女子旅* 谷釜尋徳 晃洋書房 2023
きのうのオレンジ* 藤岡陽子 集英社 2020
室町無頼(上・下)* 垣根涼介 新潮文庫 2016 

極楽征夷大将軍* 垣根涼介 文藝春秋 2023

等持院 の山門の内側で暮らしているのに、足利尊氏 について知っていることは少ない。権力闘争というと、皆、野心をギラギラ燃やしながら争っている印象があるけれど、たしかに尊氏のように、立場上、仕方なく、イヤイヤ関わっていた人物がいたとしても不思議ではない。物語りは尊氏と弟の直義(なおよし)、そして執事である高師直(こう もろなお)の三人を軸に進んでいく。2段組500頁長編をだれることなく書き切った垣根涼介 の体の体力は見事。ぼちぼち紅葉の季節だし、一度、等持院のお庭観にいってこようかな。


自由への手紙*   オードリー・タン 講談社 2020
和ろうそくは、つなぐ* 大西暢夫 アリス館 2022
馬と話すための7つのひみつ* 河田棧 偕成社 2022

関西フォークとその時代 瀬崎圭二 青弓社 2023
 先月92歳で亡くなった片桐ユズルの多岐に渡る仕事を評価していく上で、貴重な示唆を与えてくれる一冊。難解になっていった戦後の現代詩の傾向を人々の手に取り戻すため、1959年から60年代にかけての米国留学の折に触れたビート詩人たちの自作詩朗読のスタイルを導入し、鶴見俊輔の限界芸術論の考えを援用することを試みていった。それがベトナム反戦運動を通じて関西フォークソング運動へと流れ込んでいく。拡散的な片桐ユズル の仕事は見えにくい。詩論を中心に据えた瀬崎のこの論考は、そこに一本の基軸を与えてくれるものになっている。1960年〜70年という現代史を理解していく上でも有用な書籍といえる。同時代も半世紀経つと歴史になるのだ。