2013年8月11日日曜日

日本沈没

日本沈没(小松左京著 小学館文庫 2006)を読み終えた。初版は1973年なのだが、その時点では読んでない。なんと40年の時を隔てて初めて読むことになったのだが、311を体験した後だけにリアリティがある。311後の原発事故のあと、この国の当事者能力のなさに絶望したのだが、この日本沈没に出てくる政治家・官僚たちは当事者として危機に対峙する気概をもっていて実に羨ましい。僕がディアスポラという言葉を知ったのは90年代のことだと思うのだが、この単語もすでにこの小説の中で使われている。難民の受け入れに消極的なこの日本という国の一億の民が難民化するという設定がなんともすごい。プレートテクトニクス理論を援用した日本沈没のメカニズムも素晴らしいし(大陸移動説が認められたのが20世紀半ばというのは意外)、国際政治の動きもきっちり書き込まれている。前半の風俗描写とか、古臭さを感じさせる部分はあるが、全体としてみると、これは名作としかいいようがない。