2024年8月18日日曜日

植物考

藤原辰史 の「植物考」。
何年か前、書店で見つけた時には、表紙の写真が怖くて、手に取ったはよいが、すぐ書棚に戻してしまった。

ツル系の植物成長を観ていると、なんと頭がいいんだろうと、いつも感心させられる。柔らかい紐のような触手を空中に揺らせて捕まるところを見つけ、あっという間に、巻きつけていく。一旦巻きついたら、じょじょに水分を抜いて固定化させていく。グリーンカーテンとして毎年育てているゴーヤ用に張っている麻ひもの上を等間隔でツルを巻きつけながら進んでいく様は美しい。

根を持つこと、翼を持つこと。
このフレーズは、僕の記憶が正しければ、1970年代、僕らのバイブル的存在だった真木悠介 (見田宗介 )の「気流の鳴る音」 で使われていたものだ。土着と放浪、この二律背反とどう折り合いをつけていくのかが、若者にとっての大きなテーマであった。しかし、藤原は言う。根をもち、その土地に縛られているように見える植物は、世代をつなぐとき、風の力を借り、鳥の翼を使い、人の力も借りて、大きく移動するのだと。まったくその通りだ。